一般には知られていない環状列石群などがあり、面白いハイキング・ルート。歩く距離も適度で、舗装道路歩きも一部だけ。春の花や紅葉も楽しめる。
JR醒ヶ井駅のホームに立つと、南側に中山道が走る醒井宿。そして北側には川向うに低い山が連なっています。この山が通称かぶと山。山の向こう側多和田地区からハイキングコースが整備されており、半日程度のハイキングにちょうど良いところです。
かぶと山には古代の山城とされる多和田城跡があり、また城に付随する施設なのか不思議な環状列石群も残されています。
JR醒ヶ井駅からかぶと山はすぐ近くに見えますが、JR醒ヶ井駅との間には天野川が流れており、醒ヶ井駅からかぶと山に直行するルートはないようです。かぶと山の起点となるのは山の反対側、多和田地区にある大宝神社です。JR醒ヶ井駅からは徒歩でルートにもよりますが、短い中山道歩きを含め、30分から45分くらいの距離です。
コースの見どころ
JR醒ヶ井駅からは駅前の国道を右折し、歩き始めます。交通量が多いのに歩道もない歩くのが嫌な道がしばらく続きます。まず出会うのが「一類狐魂等衆」と書かれた碑。
この碑の由緒は脇にある看板に示されています。逸話を読んでも「一類狐魂等衆」の意味はよくわかりません。
江戸時代後期のある日、東の見附の石垣にもたれて、一人の旅の老人が、「母親の乳がのみたい…」とつぶやいていた。人々は相手にしなかったが、乳飲み子を抱いた一人の母親が気の毒に思い「私の乳でよかったら」と、自分の乳房をふくませてやりました。老人は、二口三口おいしそうに飲むと、目に涙を浮かべ「有り難うこざいました、本当の母親に会えたような気がします。懐に七〇両の金があるので、貴女に差し上げます」と言い終わると、母親に抱かれて眠る子のように、安らかに往生をとげました。この母親は、お金は頂くことは出来ないと、老人が埋葬された墓地の傍らに、「一類狐魂等衆」の碑を建て、供養したと伝えられています。
一類狐魂等衆碑の説明版
続いて道は上丹生川にかかる息長橋を渡ります。上丹生川は醒井養鱒場から流れて来る川です。息長橋の息長は、古代にこの地で勢力を持っていた息長氏に由来する地名でしょう。この橋のたもとにあるのが壬申の乱・横川の古戦場跡の案内板。古戦場は柏原近くの梓河内あたりであるという説もあるようですが。
この先、右に旧中山道が分岐します。左が国道、右が中山道。
中山道へ入りしばらく歩いたら右折。すぐにJR東海道線の踏切を渡りますが、正面に見えるのがかぶと山。向こう側に回り込まなければいけません。
道は天野川の橋を渡ります。ここからは天野川の堤防沿いを進む道を取りましたが、実は堤防から降りて山すそを周り込む道があります。途中未舗装の農道なのでGoogle Mapには載っておらず、気が付きませんでした。帰り道はそちらを取りました。
天野川の堤防に続き、水田の間を歩き、山間に入ったところが多和田の集落。ハイキングコースの起点になるのは大宝神社です。ここにはかぶと山ハイキングコースの案内があるので、すぐに登り口はわかりますが、大宝神社の境内を経由しても登れます。大宝神社は地域の特産品である近江真綿(絹のこと)の守護神として祀られているそうです。
登山口は大宝神社の右側の道を上っていくとすぐ。南山は三つあるかぶと山の南の峰のことです。登山道は登り始めは非常によく整備されており、迷うようなことはありません。
しばらく登ると、南山のピーク直下、多和田城の曲輪だと思われる龍宮の森に出ます。ここには環状列石群の案内と、龍宮社と呼ばれる祠があります。大きなベンチもあって弁当に最適。
ここから南山の三角点、そして多和田城跡とされるあたりに登る案内看板があります。道はわかりませんが、植生はあまり多くないので適当に登っていけます。
この辺りを見てみると、曲輪と思われる平坦地や、石積み、環状列石と思われる石の並びなどが見られます。知らない人なら見落としますね。
この辺りから、ハイキングルートは一部怪しくなりますが、基本的に尾根上を通っているので、尾根をたどれば道が見つかります。しばらく進むと中峰の環状列石の案内。環状列石と聞くと、イギリスなどにあるストーンサークルを思い浮かべますが、かぶと山の環状列石群は、大小の石をびっしりと敷き詰めたような状態のもので、目立った石がポツンポツンと環状に並んでいるわけではありません。
それどころか、環状列石を踏んで歩かないといけない場所も。
道が鞍部に向かっての下りに入ると、多和田の風穴があります。かぶと山は石灰岩地形ですから、水によって石灰岩が溶かされてできたものです。規模が小さいせいか鍾乳石は観察されていないそうです。
しばらく下ると鞍部に出て、道は真っすぐ北の尾根を進むものと、集落の最奥にある日枝神社に降りる道とに分かれます。この日はお腹が空いたので日枝神社に降りました。
ここからは、集落を抜けて醒ヶ井駅に帰るだけです。帰り道の多和田の集落にあったのが水色のレトロな建物、擴識学校の跡。ここはどうやら明治時代に小学校だったようです。脇の看板には多和田地区の歴史や、地場産業の真綿について書かれています。
多和田からは山すそを巡る農道を通ります。こちらが近道。途中未舗装です。
そして、天野川の橋を渡ったら、天野川の堤防沿いに歩いてみました。ここは良いハイキングコースです。
やがて道は上丹生川の合流地点に達します。ここから醒ヶ井駅はすぐ近く。
取材の日(4月中旬)に見た植物をどうぞ。かぶと山はオオムラサキが生育するなど、自然も豊かな場所のようです。クヌギの木が多いのが印象的でした。オオムラサキはクヌギの樹液に集まるそうです。
集合場所
JR醒ヶ井駅が集合場所、出発点になります。
行程とコースタイム
このコースはJR醒ヶ井駅から歩き始め、4時間ほどです。
昼食
醒ヶ井駅の周辺の飲食店は軒並み閉まっていますので、弁当持参がお勧めです。その他コース中には飲食店もコンビニもありません。少し寄り道ができるのであれば、息長郵便局に近い能登瀬にある丸善おくむら(公式サイトはこちら)をお勧めします。
トイレ
醒ヶ井駅の外にあるだけです。
持ち物と服装
軽登山用の服装と靴を勧めます。
ハイキング適期
年中訪れることができますが、夏の暑い時期にはヒルが出るそうです。
早春と、秋の紅葉の頃がベストです。
近隣の見どころ
醒井宿の散策がお勧めです。他の醒ヶ井駅を起点とするハイキングコースとの組み合わせも可能ですが、時間的に厳しいと思います。
多和田の集落から山津照神社などを訪れることも容易にできます。以下のコースを参照してください。